VS ジーン・ワルツ 星☆☆☆☆☆☆☆☆
at 新宿バルト9

昨年観た映画の中で、1番多くの星を獲得した映画は9つ☆だった。つまり、☆10個の作品が、このブログを始めて以来、初となる0作品だったということである。
もっと言うと、映画を本格的に観出した2002年以降でも、初となる事態だった。その一方で、世間的には映画の興行収入が過去最高を記録した。3D対応の映画館が増えたこと、シネコンの普及等が1番の理由と考えられ、逆に多くのミニシアターがシネコンに客足を奪われ、閉館に追い込まれた。
特に邦画のシェアに関して言えば、東宝の独り勝ちが長らく続いている。。確かに一時期の東宝映画は内容、興行収入共に素晴らしかった。しかし、最近は確実に収益の見込める、テレビドラマの劇場版や、リメイク作、ヒットが約束された話題のベストセラーの映画化ばかり。。しかも、その多くに若いアイドルたちが多数出演し、彼らの人気のみで興行収入を稼ぐようなアコギな作品も目に付く。。
前談が長くなってしまったが、今作も話題のベストセラーの映画化ではある。しかし、その内容にはビッシリ現代への問題提起や、メッセージが詰まっている。娯楽だけが映画ではない・・・そんな骨太な作り手側の姿勢が伝わってきます。
この映画の製作会社は東映。昨年のヒット作「孤高のメス」も東映の配給でした。あの作品では、「脳死肝移植」を巡る理想と現実を描きましたが、今回のテーマはより深く「遺伝子操作」。
主人公の曾根崎理恵は、遺伝子学に長けた大学病院の医学部助教。彼女にはもう一つの顔があった。それは廃院寸前の小さな産科医院で、産婦人科医兼院長代理をしていること。過去のある出来事により、産婦人科の現実に失望して、独自の行動を取るように。かつて同じ産科医院で研修をこなし、今は彼女の上司でもある清川はそんな彼女が心配でならない。
彼女が抱える4人の妊婦。高齢出産に、先天性障害児の出産、望まない妊娠の上の堕胎希望・・・そして代理母出産。。5分間だけ生きた未熟児とその両親、堕胎を止め一人での出産を決断する10代のコギャル、そして妊娠できない体の娘に代わって代理母出産を決意する母親・・・。
それらの妊婦たちの物語と並行して描かれる、ミスとは呼べない出産の失敗により、警察に逮捕される医師の姿。そして、その後訴えられるリスクを避ける余り、受け入れ拒否により死産する妊婦の姿。どれ一つ今の日本は解決できていないのだ。
正直、主人公の決断が正しいのかはわからない。間違っている可能性もある。ただ、一ついえることは、動

かずして大勢を変えることは出来ないということだ。理恵は外から、清川は内から自分の理想の遂行のため、歩みを始める。
主演の2人の演技は素晴らしかった。菅野さんのある意味女性を捨てて、自らの辛い経験や、現実の医療問題に立ち向かう姿が印象的でした。無表情で、ぶっきらぼうな、ある意味ロボット的ですらあるのだけど、その彼女が母親や、清川の前だけに見せる笑顔がとても綺麗でした。また、彼女の行動に対立しつつも、最終的には助けてしまう、清川役の田辺さんもグッジョブ!惚れた男のもどかしさ存分に見せて頂きました!
妊婦役の皆さんもとても個性的。特にモデル出身の女優・桐谷美玲さんの体当たりの演技や、風吹ジュンさんの和みの演技は、さすが女優!と思わせてくれました。劇中で答の出ていない問題もあるし、冒頭の医療事故で逮捕された医師のその後が全く描かれていないという部分もありますが、「チームバチスタの栄光」等で知られる現役医師であり、ベストセラー作家でもある海堂尊さんらしい骨太の社会派医療作品を是非お楽しみください。(ラストの小田和正さんの主題歌まで、必ず席を立たずに聞くこと!泣けます!!)